浮体式洋上風力発電事業を進める上で、国民の理解を促進することは大切です。OPTIFLOWのプロジェクトにおいて国民理解の促進を担当する東邦大学の竹内先生にお話を伺いました。

東邦大学 竹内先生

竹内先生のプロジェクトへの関わりについて教えてください。

OPTIFLOWは、世界の最先端の技術開発のプロジェクトです。浮体式洋上風力発電は、海に浮いているタイプの洋上風力発電設備で、巨大な風車やタワーを支える浮体は結構大きなものを作らなきゃいけません。これをいかに軽量化してコストを下げていくか、今まさに日本でも検討が始まっています。ただ、こういうプロジェクトが進んでいることはあまり知られていません。現在の学生がバリバリ仕事し始めるときに、少しでも知っている人を増やすために、このようなホームページを作成したり、高校生や市民対象の講座を開設したりしながら、広報を行なっております。

具体的にはどのような活動をされたのですか?

まずはホームページを作りました。2050年までにカーボンニュートラルを達成するためには、こういう技術を持った人たちだけでなく、事業を進める企業、行政や国民の努力が不可欠なんですよね。「知っている」ことは行動や意思決定、話し合いに参加する姿勢にかなり大きく関わってくるので、このような技術開発が行われていることを国民に知ってもらうってことが大きな目的です。今回のOPTIFLOWですが、すごく精巧な技術が必要なものなので、日本がこれまで培ってきた技術力を活かせると考えています。これからの日本の経済を循環させていく一つのカギになると思います。

二つ目に、市民講座を北九州市で企画しました。このホームページのインタビューにご協力くださった方々に講師になっていただき、市民の皆さんにOPTIFLOWのチャレンジについて、もう少し深く学んでもらうことを目的としています。

三つ目は、高校生を対象とした環境ミュージアムでの洋上風力と人材育成をテーマにした講座です。こんなクリアファイルをプレゼントしました。

 

図:OPTIFLOWのクリアファイルのデザイン

 

かわいい!

かわいいですよね!東邦大学の学生が中心となって作ってくれたんです。こういうものも使って、OPTIFLOWに興味を持ってもらい、さらに使ってもらうことでその周りに広まったりすることを狙っています。

風力発電って、東京湾など関東圏はどうなんですか?

直接は関わっていないですが、プロジェクトの計画はあるんですよ。千葉の銚子沖の話は聞いたことあります?皆さんが銚子実習で行った屛風ヶ浦の方に建設する計画があります。

結構遠いようで近いような感じですね。景観の問題とかはあるんですか?

      

銚子の展望台から富士山が見えるそうなのですが、富士山にかからないようにレイアウトを変更したようです。

             

これって1基でどれくらい発電するんですか?

   

規模にもよるんですが、今、洋上風力で一番規模が大きいと言われているものでは1機で12MWくらいです。10MWの洋上風力で8000世帯分の電力を発電できます。陸上よりも洋上は大きい規模のものを設置できるので、例えば10MWの風車を設置したときに1機で8000世帯分、30機立っていたとしたら8000×30世帯分の電力をまかなうことができます。

             

すごいですね。

あと、今後洋上風力発電設備が設置される地域の中には、基金の設置が計画されているところもあります。この様な地域は財源が増えるので新しい施設を建てたり、地域活性化に資する新しいプロジェクトを計画したりできます。また、この地域にお金が支払われるだけではなく洋上風力に関わっている事業者の人たちがアイデアを持っています。洋上風力が始まったら電力を供給するだけでなく、事業者さんが地域の需要を把握しながら新しいプロジェクトを作ってくれるところがすごく面白いです。

電力を作るだけじゃないのですね。

そうなんです。ただ、この話って地域の人々などには伝わりにくいんです。どうしたら地域の方に積極的に関わっていただけるか、最近の大きな研究テーマです。

竹内先生の研究のゴールはどこですか。

どんどん新しい研究テーマが出てくるので難しい質問ですが、洋上風力発電に反対している人は必ず存在するので、それを0にすることはゴールではありません。洋上風力発電の導入が検討されている、とある自治体の実例ですが、発電事業者が地域の方と話し合いを重ねて、農業を盛り上げていくことにしました。これまでとは異なる運搬方法の検討や、IT技術を活用した生産量のコントロールなどを行うことを検討しています。野菜や果物を効率的に需要地へ届けることができれば、売り上げも増えていく、そして地域が活性化していくという可能性があります。いろいろな方法があると思いますし、正解はないと思いますが、地域の方が洋上風力発電があってよかったと思える状況を作れるように頑張っていきたいです。

 

竹内先生からお話を聞いて、国民が「知る」ためには様々な努力が必要なことがわかりました。洋上風力発事業に関する情報を正しく適切に伝えていくことの重要性を理解できました。

インタビュー担当:ひなこ ゆきな

【インタビュー実施日 2023年2月16日】