OPTIFLOWのプロジェクトでは、若い方々にプロジェクトについて知っていただくために高校生講座を開催しました。開催の支援をしてくださった、環境ミュージアムの伊藤さんにお話を伺いました。

環境ミュージアム 伊藤さん

伊藤さんが環境ミュージアムで働くようになった経緯やどのようなことを勉強されてそちらにいらっしゃるのかお伺いしてもよろしいでしょうか。

環境ミュージアムは北九州市の施設なのですが、北九州市が直接管理しているわけではなく、民間に委託して管理しているという形になっています。このような仕組みには、市や行政が持っている施設を、民間のアイディアやバイタリティーを生かして活性化させていこうと言う狙いがあります。環境ミュージアムを、私が勤めているNPO法人が受託をして、管理を行っています。このため、私の所属はNPO法人「里山を考える会」になります。この里山を考える会が環境ミュージアムの指定管理について提案書を書いて承認されたのち、事業に取りかかっています。事業内容として、SDGsや環境をテーマにした啓発イベントを行っています。その活動の一つとして、洋上風力発電に関する高校生への意識啓発イベントのお手伝いをさせていただきました。

当日の講義の様子

高校生のイベントで、参加者の「洋上風力」の認知度や興味関心はどの程度ありましたか。

北九州市はイベントをやっても人を集めるのに苦労する場所で、基本的に洋上風力の講座をやりますといっても高校生は集まらないんですよ。というのは、そもそも、環境ミュージアムがある八幡東区というのは3人に1人が超高齢者といわれているくらいなんです。また、高校生を集める場合、講座のプログラムが決まってしまっているので、本当に興味のある高校生や、たまたま探求の授業で参加する高校生がいらっしゃるぐらいです。

ですから今回は作戦を練って、いくつかのイベントを並行して開催しました。同じ会場でイベントを行い、興味を持った参加者にそのまま参加してもらう、という形にしました。洋上風力発電に興味がなかった高校生にも、北九州市のこれからについて知ってもらうことができ、これから電気について考えないといけないという意識を持って帰ってもらえました。一般的に洋上風力の話聞きませんか、洋上風力って知っていますかと言っても、ほとんどの人が知らない、興味がないんです。しかし、目の前にこのような問題があるんですよ、と伝えると、関心を持ってくれます。これは、電力供給が重要な課題であるという意識が芽生えるからではないかと思います。

普段環境ミュージアムに地元の高校生が来ることはほとんどないんですが、高校生に来てもらう機会を多くつくり、洋上風力の重要さや課題などを話していけたらなとセミナーを通して思いました。

高校生ワークショップで人を集めることについて、他のイベントと重ねること以外で工夫したことはありますか?

イベントの告知を先生や学校だけじゃなくて、いろんな市民活動やNPOの運営者たちにも配ってみるんです。そうすると、市民活動に課外活動の一環で来ている高校生など、社会課題に興味をもっている高校生たちに情報を届けられるんです。最初は学校の先生に対してだけ連絡をしてたのですが、それだけでは限界を感じて市民活動やNPOの方に相談したところ、高校生はいろいろなボランティアなどに入っているから、そういうところに告知してみるといい、とアドバイスをもらいました。幅広く告知をしていけたことが最終的に良い結果に結びついたと思います。高校生を集めるとなると学校ばっかりを意識してしまいますが、そうではなくて高校生はいろんなところに出入りしていることを知って、そういうところに呼びかけられたからあれだけ人が集まったんだと思います。

このディスカッションでどんな感じのことを高校生たちと話し合ってもらってどのような意見が出たり印象に残ったりしましたか。

全体的に洋上風力に興味のなさそうな高校生も話が終わった後に、先生に質問されていました。

してましたね。

それを見て、このような機会はやはり高校生の可能性を広げる、また、自分たちのエネルギーについて考えるきっかけになるんだなと感じました。

どんな勉強をすれば、この分野で就職できるのか話されている学生さんたちもいましたね。

学生への環境教育の問題はあると感じますか。

現在は市内の小学校4年生が校外学習で来てくれます。先生が環境の勉強をさせていると、公害やSDGsの話をすると目をキラキラさせて「これ知ってる!」とか「これこうだよね!」とか言ってくれます。学校で環境のことを学ぶ機会がないと興味があまり湧かないという印象があります。

中高、特に高校生の場合は「受験、受験」となってしまって自分たちの周りに問題はあるけれども「勉強しなくちゃ」と視野が狭くなっていると感じます。全国の高校生が見学に来ますが、例えばスーパーサイエンスハイスクールに指定されている高校の生徒さんたちは環境問題に関する先進的な情報に多く触れているので、話がポンポン戻ってきます。一方高校を卒業してすぐに就職するあるいは専門学校に行く生徒さんが多い高校では、社会に出て役に立つ実践的な情報に触れる特別プロジェクトを先生方が組む等、興味を持たせる仕組みが出来ているようで、こうした高校の生徒さんも反応が良いです。つまり、教育全体の問題というより先生と学校が置かれた状況による感じがします。

先生への教育の機会はないのでしょうか。

今回夏休みに環境ミュージアムで先生向けの告知を出したのですが、告知の仕方が悪く応募がなかったんですよね。

昨年夏、東邦大学も高校の理科教員向けに、探求の時間について考える講座を開催しました。生物や化学の話は人が集まるんですけれども、私がやっているエネルギーのテーマは人気がなかったんですよね。ただ、集まった先生方は、高校生もエネルギーについて考えていかなくてはいけないことや、理系科目というよりは社会道徳と組み合わせたら面白いという話をされていました。先日の高校生との講座でもこのような話はでましたよね。エネルギーは生活やライフスタイルに密着しており、文系の話も入ってくるので文理融合のテーマに適していますよね。

確かにエネルギーって文理横断型でないとダメだと思っています。実は私、アフリカ研究をやっていました。実際にアフリカの地域開発をやっていたのですが、実際そこに電気を通すとなると電気技術の専門家が行ってもダメで、現地にどうやって入るか、どう教育するか、入った後にどう管理させるか、社会全体を作っていかないといけないのです。これからエネルギー=理系とは言っていられなくなり、様々な分野の方々とコラボレーションしていきながらプロジェクトを組んでいくと思います。アフリカとかで工場を造るとなったら、文化人類学の先生や社会の専門家などが参加していくと思うのですが、日本はあまりそのような分野の研究者が参加しないんですよ。そういうところは変わってほしいと思いますね。

 

エネルギー×文化人類学と言われてもピンとこない方もいらっしゃるかと思います。ただし、エネルギーと生活は密接に結びつきます。身近なところから、これからの地域のエネルギーをどうしていくのか考えることは、今後のまちづくりや地域の発展を考える上での可能性を生み出すと思いました。

インタビュー担当:ひなこ ゆきな あゆ

【インタビュー実施日 2022年10月26日】