今回は、OPTIFLOWの様々な条件下における応答解析をおこなっている佐賀大学の吉田先生に次世代浮体式洋上風力発電についてインタビューを行いました。
佐賀大学 吉田先生
今回は、OPTIFLOWの様々な条件下における応答解析をおこなっている佐賀大学の吉田先生に次世代浮体式洋上風力発電についてインタビューを行いました。
佐賀大学 吉田先生
吉田先生の専門を教えてください。
私は風車の設計解析技術、特に空力弾性制御、荷重などの解析設計法の開発と応用を行っています。
OPTIFLOWではどのような役割を果たしていらっしゃるのですか?
洋上風力発電設備の設計条件の検討、シミュレーション結果の評価、システム評価などを担当しています。洋上風力発電設備はその地点の風や波などに長い期間耐えられるように作る必要があるため、様々な設計基準が存在します。そのため、風車の故障の場合も含め、膨大な量の応答解析を行う必要があります。
システム評価について教えてください。
発電を開始する最小の風速(4m/s)から、発電できる最大の風速(25m/s)の各条件の中で、風車の挙動を把握します。OPTIFLOWはパッシブヨー(風向きに合わせて浮体が回転するという受動的な制御)ですので、機械制御で風向きに追従するアクティブヨーと比べて、発電電力量がどの程度下がってしまうのかなどは重要な評価項目です。
シミュレーションのイメージ図
連成解析においてどのような実験を行なっているのでしょうか?また、従来の洋上風力にはない影響なども考えているのでしょうか?
1つは、弾性相似モデルによる風洞試験を実施しています。JAXAの日本一大きな風洞に、1/40の風車のモデルを設置して、風速、模型の向き、ブレードあり/なしなどの様々な条件で加速度や歪みを計測しました。タワーの渦励振の影響は,シミュレーション結果と合わせて、強度に対しての荷重が十分小さく、疲労ダメージも十分小さいため、問題ないという結論になりました。そして、準静的安定解析プログラムを開発して、空力弾性的な振動が安定であることを確認しました。
風洞実験の様子
準静的安定解析で、空力弾性的な振動が安定であるという話がありましたが、それは3枚でも2枚でも変わらないのでしょうか?
本質的には変わらないです。しかし重要なのは、振動に対する減衰として、ブレードが寄与しなくてはいけないので、ブレードを固定する必要があることです。もし、3枚翼ローターでブレードを固定するのであれば、ほぼ同等の効果が得られると思います。
OPTIFLOWの生態系への影響と着床式風力発電設備と比較した場合のメリットについて教えてください。
ブレードからの空力騒音が水の中に入ることはないのですが、水中の構造体が若干振動し、水の中に伝わっていきます。ただ、その影響は非常に少ないことが分かっています。着床式の洋上風力発電設備を設置する場合は、海底に基礎を固定する際の衝撃音をいかに出さないか、ということが問題になりますが、浮体式は問題になりません。その他、影響が大きい場所を避けることや出力制限などが対策として挙げられると思います。
どれぐらいの時間をかけて、今のような設計になったのですか?
最初に浮体式洋上風力発をやり始めたのは15年前ぐらいです。その頃はスパー型やセミサブ型という浮体をやりました。この発想自体は、ヨーロッパから来たのですが、日本独自でやるために諸々の変更をして5~6年前に今の型式に辿り着きました。
吉田先生の研究室には学生が何人いらっしゃるのですか?
佐賀大学には修士の学生が1人と学部の学生が2人、九州大学には修士が2人と博士が3人です。
皆さんOPTIFLOWに関わっているのですか?
OPTIFLOWなどの企業との共同で実施しているプロジェクトのほとんどは、学生ではなく、学術スタッフと一緒に実施しています。学生の研究とはスピード感が違うので、学生は関わっていません。
2枚式の洋上風力は自然災害による影響があるのでしょうか?
風車を設置する中で設計基準が定められており、2枚でも3枚でも同じ基準で設計されます。新しい基準に従って設計された風車は問題がないと考えられます。
これまで他の実証事業に関わられてきた中で、洋上風力発電設備の振動の解析結果と、実際に実証機を動かしてみての違いはあるのでしょうか。
違う部分は色々あります。設計や開発を進めるにあたって、ベストは尽くします。ですが、設計を100%信じるのではなく、実機の段階で何かしら当初の見込みと違った場合、次にどう対処するべきなのかを常に考えて置く必要があると感じています。
今後地球温暖化が進むことで台風の巨大化など非常に強い風が起こると言われていますが、このような場合、洋上風力へどのような考慮がされているのでしょうか?
現在は、過去の台風データを基に50年に1度の暴風がどれほどの規模なのかをベースにして設計を行っています。ただし、竜巻に関しては発生頻度や滞在時間は非常に小さい確率であると考えられており、特に考慮されておりません。工業製品全般に言えることですが、どこまでも安全性追求することもできますが、社会的に受容可能な安全性のレベルで経済性との両立も考えないといけません。
なかなか普段は触れ合うことが少ないテーマでしたので、少し難しかったのですが、詳細な計算が安全で持続可能な浮体式洋上風力発電設備を設計する上で大変重要だと感じました。
インタビュー担当:まい あゆ れんや まさひと りおん 竹内先生
【インタビュー実施日 2022年6月30日】